自己分析をやり直そうと決めて、AIを開く。これまでESに書いてきたサークルやアルバイト、ゼミ、留学の経験を三つか四つ打ち込んで、「この経験から、私の強みと価値観を分析して」と頼む。数秒で、整った文章が返ってくる。読みながら、当たっている気がする。
就活でAIを使う話というと、ESや志望動機の添削のような、出てきた文章をどう使うかの話が多いようです。自己分析でAIを使うときに何を打ち込むか、という入力の側の話は、あまり見かけません。
この記事では、自己分析にAIを使う前に、自分の手元にどんな材料をそろえておけばいいのかを考えてみます。
自己分析は生成AIがいちばん使われている工程
『就職白書2026』によると、2026年卒で就職活動に生成AIを使った学生に、どの工程で使ったかを複数回答で聞いたところ、最も多かったのは「自己分析」で57.1%でした*1。
ESや志望動機を書く前の自己分析の段階から、多くの学生がAIを使っていることになります。
同じ調査で、生成AIから得た回答を吟味して修正したうえでエントリーシートなどに使った、と答えた学生は81.6%でした*1。
出てきた文章を、そのまま使わずに直している学生は多いようです。ただ、打ち込む情報そのものを増やしたかどうかまでは、この調査からは分かりません。
AIが分析できるのは打ち込んだ範囲まで
生成AIは、与えられた文章と、学習してきた大量の一般的な文章をもとに、もっともらしい答えを組み立てます。あなた個人について、AIが使える情報は、基本的にはあなたが打ち込んだものだけです。
三つの経験を打ち込めば、その三つに共通する強みが返ってきます。それは「あなたの強み」というより、「その三つに共通するもの」に近いでしょう。四つ目の経験を足せば、答えも変わるはずです。AIの答えがどこまで自分に当てはまるかは、打ち込んだ材料の範囲で決まります。
覚えていない出来事は、思い出せないので打ち込めません。悔しかった気持ちや、逃げてしまった経験は、ESに書かないぶん、AIにも打ち込まないことが多いでしょう。小学校や中学校のこと、家族のこと、途中でやめたことも、ガクチカの候補に入らなかった時点で、入力から外れています。
自分で大事だと思って選んだ経験が、整った言葉になって返ってくるので、答えが当たっているように感じるのかもしれません。選ばなかった経験は、最初から分析の外にあります。
「一緒に育てていく」使い方
我究館のコーチによると、AIをうまく使っている学生は、自分の情報をAIに全部覚えさせて、企業とどうすり合わせるかを考えたり、想定問答をつくったりしているそうです。この経験だとどこを突っ込まれるか、と聞いてみるわけです。そこまで使い込むと、出来上がったものは、もう「AIが作ったもの」とはいえません。自分で考えるために、AIに相談しているだけだからです。
反対に、うまくいかないのは、一発目からAIに答えを求める使い方です。最初に「強みを教えて」と聞くと、その時点で打ち込んである三つか四つの経験から答えが組み立てられます。AIは一発で答えを出させる道具というより、材料を足しながら一緒に育てていく道具として使うほうが、自己分析には向いています。
ここでいう「全部」は、ガクチカの候補として選んだ経験より手前にある、選ぶ前の材料のことです。年ごとに何があったのか、何を選んで何を選ばなかったのか、続かなかったことや、やめた理由も含まれます。

AIを開く前にやること
AIに渡した情報と渡していない情報を分ける
紙を一枚用意して、縦に二つに分けます。左側には、これまでAIに打ち込んだ経験を書き出します。右側には、打ち込んでいないことを書き出してみてください。小学校から今までの出来事、部活をやめた理由、うまくいかなかったこと、選ばなかった進路などです。
右側に書いたものは、AIがまだ分析していない範囲です。左側が4行で右側が20行なら、これまでのAIの答えは、そのうちの4行分を整理したものだったことになります。
3つのステップの中で、この書き分けがいちばん大事です。2と3は、この一枚をもとに進めます。
NEXT ▶ 渡した情報と渡していない情報の一覧
AIに渡す前に自分の言葉で書く
右側の中から、まず自分の言葉で書いてみるものを選びます。何があって、どう感じて、その後どうしたのかが分かれば、上手に書けていなくてもかまいません。
書いたものを、それからAIに渡します。自分で書いた材料をAIに渡すと、返ってくる答えも、自分の言葉を整理したものに近づきます。家族のことのように人に見せたくない内容は、無理にAIに渡さなくてもかまいません。紙に書き出すだけでも、自己分析は進みます。
NEXT ▶ 自分の言葉で書いた材料
AIの答えを自分の材料にたどれるか確かめる
AIが返した文章を、一文ずつ読みます。その文のもとになった材料が、自分の書いたものの中にあるかどうかを確かめてみましょう。
もとになる材料がある文は、その材料をもう一段くわしく書き足します。もとになる材料が見つからない文は、誰にでも当てはまる一般論かもしれません。その文は、消してしまってかまいません。この確かめ方は、AIの答えを検証する手順であると同時に、自分の過去を振り返る手順にもなっています。
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AIに任せられるのは、材料を整理する作業です。整理する材料はあなたの過去の中にしかなく、それを取り出せるのもあなた自身です。『絶対内定』のワークシートに書き込んだものも、そのままAIに渡せる材料として使えます。
自己分析をAIで手早く済ませたつもりでも、打ち込んだ範囲の整理で終わっていることがあります。
AIを開く前に、自分の過去から材料を集めるところから、自己分析を始めてみてください。
(参考)
*1: リクルート リサーチセンター(旧・就職みらい研究所)|『就職白書2026』データ集



