本選考で受ける会社を並べながら、手が止まる。「ここに決めたら、この先ずっとこの業界だ」。親からも先輩からも、一社目は慎重に選べと言われてきた。考えれば考えるほど、どこにもエントリーできなくなっていく。
一社目の会社選びは、その先の人生を決める選択のように感じられるものです。けれども、入社したあとのキャリアがどう続いていくのかを考える材料は、就活中にはあまり手に入らないかもしれません。
この記事では、新卒で就職した人の離職の状況と、企業の中途採用の実態をもとに、一社目の会社をどう選べばいいのかを考えてみます。
大卒就職者の33.8%が3年以内に最初の会社を離れている
厚生労働省によると、2022年3月に大学を卒業して就職した人のうち、就職後3年以内に離職した人は33.8%でした。1年目が12.1%、2年目が11.9%、3年目が9.9%です*1。
事業所の規模別に見ると、1,000人以上の事業所では27.0%、5人未満の事業所では57.5%でした*1。規模や業種によって差はありますが、大企業に就職した人でも、4人に1人ほどが3年以内に最初の職場を離れています。
大学を卒業して就職した人の3人に1人が、3年以内に最初の会社を離れています。裏を返せば、3分の2の人は3年たっても同じ会社で働き続けていることになります。

中途採用の7割近くは経験者の採用
最初の会社を離れたあとの入り口についても見ておきましょう。リクルートワークス研究所の調査では、2025年度に正社員の中途採用を行った企業の1社あたりの採用人数は、経験者が13.9人、未経験者が6.5人でした。採用人数に占める未経験者の比率は31.9%です*2。
未経験者の比率は2023年度の24.6%から上がってきているものの、中途採用の7割近くは、経験者として採用された人が占めています。新卒採用と違い、中途採用では、それまでどんな仕事をしてきたかが判断の材料になりやすいといえます。
一社目で積んだ仕事の経験は、その会社に長く勤めても、いつか別の会社に移っても、自分の経歴として残っていくものです。一社目は、長く働くつもりで選ぶ場所であり、同時に、その先の選択肢をつくる経験を積む場所でもあります。
将来行きたい場所から一社目を考える
我究館の卒業生に、第一志望の会社に届かず、証券会社と保険会社から内定をもらった人がいます。この人には、将来行きたい会社が一つありました。そこで面談では、その会社に将来移ることも見据えて、いまどちらを選ぶかを一緒に考えたそうです。
この人は、「教育をしっかりしてくれる会社」と「自分に合う雰囲気の会社」のどちらを取るかでも迷っていました。どちらも大事にしたい基準で、内定先の条件を並べて比べるだけでは決めにくい迷いです。
将来行きたい場所を先に考えておくと、内定先を比べるときに、給与や知名度とは別の物差しを持てます。その場所にたどり着くために、最初の数年でどんな経験を積んでおきたいか、という物差しです。

一社目を決める前にやること
01
10年後くらいに、自分がどこでどんな仕事をしていたいのかを書き出します。行きたい会社の名前でも、仕事の中身でも、暮らし方でもかまいません。いまの時点の仮の答えで十分です。
ここが書けないと、内定先や応募先は給与や知名度などの条件でしか比べられなくなります。3つのステップの中で、将来立っていたい場所を書き出すことがいちばん大事です。
▼ 次へ将来立っていたい場所
02
候補の会社ごとに、入社してから最初の数年でどんな仕事をすることになりそうかを調べます。配属の決まり方や、若手のうちに経験する仕事の中身は、説明会や面接の逆質問、OB・OG訪問で聞いてみましょう。
最初の数年の仕事の中身が分かれば、その経験が1で書いた場所につながりそうかを比べられます。同じ業界の会社でも、最初に担当する仕事が違えば、積める経験も変わってきます。
▼ 次へ会社ごとの最初の数年の仕事
03
1で書いた場所で働いている人や、そこへ移った人に会い、どんな会社でどんな仕事をしてから今の仕事に就いたのかを聞きます。OB・OG訪問や大学のキャリアセンターの紹介、知人のつてを使って探してみましょう。
実際にその場所にたどり着いた人の経歴は、2で調べた経験がそこにつながるかどうかを考える手がかりになります。行きたい場所への道筋が見えてくれば、一社目をその道の上で選べるようになります。
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一社目の会社は、その先の人生をすべて決めるものではありません。それでも、一社目で積んだ経験は、その会社で働き続ける場合にも、次の会社を選ぶ場合にも、自分の経歴として残っていきます。
内定先や応募先を並べる前に、将来どこに立っていたいのかを、一度書き出してみてください。
将来立っていたい場所が自分の言葉になっていれば、一社目の会社を、そこへ向かう経験を積む場所として選べます。
(参考)
*1: 厚生労働省|新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します
*2: リクルートワークス研究所|中途採用実態調査(2025年度実績、正規社員)



