面接で「あなたの短所は何ですか?」と聞かれたとき、どう答えるか。
多くの人が気にするのは、答えの中身です。何を言えば印象が悪くならないか。どう言い換えれば好感を持たれるか。
でも、面接官が本当に見ているのは、答えの中身よりも、もっと手前のことかもしれません。
面接官は、なぜ短所を聞くのか
「心配性です。でも、それは裏を返せば慎重さでもあります」。 「頑固なところがあります。でも、それは意志が強いとも言えます」。
短所を聞かれたときの定番の答え方です。就活の対策本にも、ネットの記事にも、このパターンはたくさん載っています。
面接官はこのパターンを何百回と聞いています。言い換えが返ってきた瞬間、面接官が思うのはおそらくこうです。「上手な言い換えだな。この質問からは、この人についての情報は特にないな」。
逆に言えば、ここで自分の短所に正面から向き合った答えを返せれば、面接官の印象に残りやすい場面でもあります。
ただ、これはテクニックの話ではありません。こうすれば面接を通過しやすい、という話をしているのではないのです。
自分の短所に正面から向き合うことは、つらいことです。痛みを感じることでさえあるかもしれません。
でも、だからこそ、自分という人間をきちんと知るために必要なことでもあります。多くの人は、ここまではやりません。だからこそ価値がある。自分を深く知ることができるという意味で、価値があるのです。
面接で印象に残るかどうかは、その収穫の一部にすぎません。
面接官が短所を聞くのは、その人が自分の弱さにどう向き合っているかを見るためです。
仕事を始めれば、必ず壁にぶつかります。思い通りにいかないこと、自分の力が足りないこと、認めたくない現実。たとえば、営業で結果が出ない時期が続いたとき。チームの中で自分だけが成果を上げられていないとき。
そこで自分の弱さを認めて軌道修正できる人と、認められずに同じやり方を繰り返す人とでは、その後がまるで違います。面接官は、その分岐点を、入社前に見ようとしているのです。
『絶対内定』にはこう書かれています。「弱点は直そうと思うな。しっかり把握せよ」。
直す前に、まず見つめる。認識する。逃げない。ここが出発点です。

短所と向き合うのは、きつい
短所は、たいてい失敗の記憶とセットです。うまくいかなかった経験、恥ずかしかった場面、誰かを傷つけてしまったこと。短所を見つめようとすると、そういう記憶がいっしょに浮かんできます。
『絶対内定』にはこう書かれています。「見たくないものとは、短所だ。自分の人間性における短所だ」。「自分のいいところだけ見る。見せる。芝居する。ごまかす。ウソをつく。人にも自分にも。それでは就職活動では絶対に通用しない」と。
きつい言葉です。でも、ここで逃げないことが、すべての始まりになります。
自己分析がうまくいかない人の多くは、「面接で何を言うか」「エントリーシートにどう書くか」を目的に分析してしまっている、とも書かれています。
つまり、前回の記事でお話しした「見せ方モード」です。見せ方モードで短所に向き合おうとすると、「人に言える表面的な自分」だけを分析することになります。
その結果、やればやるほど自信がなくなっていく。表面を取り繕っているだけだと、自分でも分かっているからです。
でも、あなたはもう乗り越えてきている
あなたはいま、大学を卒業しようとしています。就職をしようとしています。就職活動に向き合おうとしている。
ここまで来る間に、失敗も、挫折も、悔しさも、たくさんあったはずです。
試験に落ちたこと。人間関係がうまくいかなかったこと。自分で決めたことを途中でやめてしまったこと。頑張ったのに報われなかったこと。誰にも言えないまま飲み込んだ悔しさもあるかもしれません。
でも、それを乗り越えてきたから、いまがある。
全部うまくいったわけではないかもしれない。まだ挽回できていないと思っていることもあるかもしれない。それでも、なんとかここまでやってきた。いま、就活に向き合おうとしている。
強くなったのかもしれないし、そうではないかもしれない。でも、あなたはそのあなたで、ここまでなんとかしてきた。それだけで、もう十分です。
その事実を、そのまま見ればいいのです。
振り返れば、支えてくれた人もいたはずです。気づかされたこともあったかもしれない。後悔が残っていることもあるかもしれない。それも含めて、全部、いまのあなたです。
克服できる短所なら、克服すればいい。克服が難しいなら、カバーする方法を考えればいい。どちらにしても、まず見つめることが先です。

短所だと感じること自体が、あなたの価値観
そしてもうひとつ。あなたがそれを短所だと感じていること、それ自体が、あなたの価値観を映しているかもしれません。
同じことができなくても、同じ失敗をしても、気にしない人もいます。でもあなたは気にしている。それは、あなたがそこを大事にしているからです。
たとえば、「人前でうまく話せない」ことを短所だと感じている人がいるとします。でも、適当にしゃべってもまったく気にならない人もいます。うまく話せないことが悔しいのは、「ちゃんと伝えたい」という気持ちが強いからです。その悔しさの裏に、あなたが大切にしているものがある。
もちろん、すべての短所にきれいな裏側があるわけではありません。ただの怠けや甘えもあるでしょう。でも、自分の胸に手を当てて「これが気になる」と感じるものがあるなら、そこにはあなたの価値観が隠れている可能性があります。
強みと弱みは、表裏一体です。我究館のワークシートには、「自分の強みから考える弱み」というものがあります。自分の強みを挙げたら、その強みを持つ人は一般的にどんな弱みがあるかを考えてみる。行動力がある人は、走り出す前に考えることが苦手かもしれない。慎重な人は、決断が遅れることがあるかもしれない。
短所を見つめることは、同時に、自分の強みの輪郭をはっきりさせることでもあるのです。

短所を見つめ、受け入れる
短所と向き合うというのは、特別なことをすることではありません。これまで自分がつまずいてきたこと、うまくいかなかったことを、否定せずに、ごまかさずに、ただ見つめてみること。
『絶対内定』は、このプロセスを三つのステップで整理しています。
最初に、自分の短所を客観的に見つめる。見たくないものから目をそらさず、落ち込むところまで落ち込む。心からの悔しさを感じる。
次に、理屈抜きで「こうなりたい」と思える人物に出会う。その人に触れることで、自分を変えたいという気持ちが生まれる。
そして、否定していた自分を受け入れる。短所も含めた自分を丸ごと引き受けて、この自分で生きていくと決める。
「落ち込むところまで落ち込めば、あとは上がるしかない。希望しかない。嫌でも覚悟ができるのだ。覚悟ができれば、本気になれる。ぐんぐん動ける。逃げ出したい気持ちがゼロになる」。
自分と向き合う覚悟の話です。

向き合った時間が、言葉になる
短所と向き合ってきた人の言葉には、特徴があります。
言い換えていません。飾っていません。自分の弱さを認めたうえで、それとどう付き合っているかを、自分の言葉で語っている。
「自分にはこういう弱さがあります。それに気づいたのは、こういう経験がきっかけでした。今も完全に克服できたとは思っていません。でも、こうやって向き合おうとしています」。
飾りのない言葉です。でも、信頼があります。
短所を語ることは、弱さをさらすことではありません。自分と向き合ってきた時間を、そのまま差し出すことです。
その時間は、誰かに見せるために過ごしたものではありません。自分のために、自分と向き合った時間です。だからこそ、言葉に嘘がない。聞いている人にも、それは伝わります。
大丈夫です。ここまで来たあなたには、差し出せるものが必ずあります。



