ESはそこそこ通る。面接にも呼ばれている。書き方も工夫した。構成を整えて、数字も入れて、一行目にインパクトも持たせた。面接でもそれなりに話せている。
なのに、面接で落ちる。「選考の結果、誠に残念ながら」のメールが、また来る。
同じゼミのあの人は、もう内定を持っている。ESの通過率は自分のほうが高いのに。面接に進んだ数も自分のほうが多いのに。何が違うのか、分からない。
一方で、こういう人もいます。ESの通過率はそこまで高くない。出した数も多くない。でも、面接に進んだあとが強い。最終面接を通過して、内定を取っている。
この差は、ESの書き方では説明できません。もっと根本的なところに、理由があります。
ESは、足切りの道具ではない
多くの学生は、ESを「面接に進むためのフィルター」だと思っています。通過すればいい。本番は面接だ、と。
実は、面接官はあなたのESを手元に置いて面接をします。ESに書いてあることをもとに質問をし、そこから掘り下げていきます。「当社で実現したいことは具体的に何か」「なぜ競合他社ではないのか」「自分のどんな強みが活かせると思うか」。
もし、締め切りに間に合わせるためにいいかげんなESを出していたら、この掘り下げに耐えられません。自分でもよく分かっていないことを書いているのだから、聞かれたら答えられない。
たとえば、志望動機に「御社の成長性に惹かれました」と書いたとします。面接で「具体的にどの事業の成長性ですか」「それはうちでなければならない理由になりますか」と聞かれたとき、書いた本人が答えられなければ、その場で信頼は崩れます。ESに書いた一行が、面接の三十分を左右するのです。
そして、一度提出したESは修正できません。最終面接まで、ずっとついて回ります。
ESは足切りの道具ではなく、面接の土台です。ESの質が、面接の質を決める。就活の勝負は、ESの段階でほとんどついています。

ESの通過と内定は、別の力で決まる
意外に思われるかもしれませんが、ESの通過率と内定の数には、直接の関係がありません。
通過率が高いのに内定が出ない人がいます。たくさん出して、たくさん通過して、面接にも進めている。でも、内定が出ない。
文章力がある人、論理を整えるのがうまい人、学歴や実績が強い人は、ESを通過できます。書類としての力があるから、通って当然です。でも、面接に進んだあとの結果がついてこない。ESの通過と内定は、別の力で決まるのです。
逆に、通過率はそこまで高くないのに、内定を取る人がいます。通過した数は少ない。でも、面接に進んだあとが強い。
ESが通らないと焦って、とにかく数を出そうとする人がいます。一社ごとに向き合う時間が減り、中身の薄いESが増える。それで面接に進んでも、同じところで止まります。
この二つの差は、どこから来るのでしょうか。
ESの質は、何で決まるか
ESには、書き方のテクニックがあります。一行目で引きつける。数字を使って具体性を出す。構成を整えて読みやすくする。
こうしたテクニックを使って仕上げたESは、見栄えが良くなります。文章も読みやすいし、設問ごとによくまとまっている。書類として「良いES」です。面接に進める可能性は高まるでしょう。
ただ、見栄えが良くても、書かれていることが自分の軸とつながっていなければ、それは作り物です。うまい人ほどそれらしくまとまっているけれど、根っこでひとつになっていない。面接で「なぜそう思ったのか」「それは他の経験とどうつながるのか」と掘り下げられたとき、答えに本人がいない。面接官はそこで気づきます。このESは、よくできているけれど、この人自身の言葉ではないのだと。
文章や構成を整えられるのは大事なことです。ただ、ESにおいていちばん重要なことではありません。
では、ES通過後の面接まで強い人のESには、何があるのか。
自己分析の深さです。
自己分析が深い人のESは、どの設問にも一貫した軸があります。ガクチカを聞かれても、自己PRを聞かれても、志望動機を聞かれても、根っこが同じです。だから面接で掘り下げられても、どの角度から聞かれても、自分の言葉で答えられる。
書類としての完成度を高めるのは、この幹ができたあとです。幹がないまま枝葉を飾っても、面接で揺さぶられたら倒れます。

ESの最初のステップは、書くことではない
ESを完成させるまでには、四つのステップがあります。
ステップ1――自己分析
最初のステップは、自己分析です。
自分はどんな人間か。何を大切にしてきたか。誰に、何を届けたいか。この問いに自分なりの答えを出しておくこと。それがESの土台です。
ここを飛ばして書き始めると、設問に合わせて「それらしいこと」を探す作業に変わってしまう。結果として、前の章で話した「作り物のES」ができあがる。見栄えは良いけれど、裏に本人がいないESです。
自己分析にはどうしても時間がかかります。でも、ここで出した答えのうえに、ガクチカも、自己PRも、志望動機も、全部書くことになる。しっかりしていれば、どの設問にも迷わず書ける。
ステップ2――書いてみる
次のステップは、書き始めることです。最初から完璧を目指す必要はありません。まずは書いてみて、自分の考えを文字にしてみる。
自己分析では見えていたつもりのことが、書いてみると意外とうまく言えない。「あれ、自分はこの経験から何を学んだんだっけ」と立ち止まる。それは、自己分析がまだ足りていないというサインです。書くことは、自己分析の続きでもあります。
ステップ3――企業研究
三番目のステップは、企業研究です。自分が届けたい価値を、この会社のどの事業で、どの仕事で実現できるのかを調べる。
自分の軸があると、同じ説明会に出ても、同じIR資料を読んでも、「自分が届けたいものとどうつながるか」という問いを持って接するから、志望動機の材料が自然と見つかります。
ステップ4――文章を磨く
最後のステップが、文章を磨くことです。読みやすさ、具体性、表現の精度を整えていく。ここで初めて、テクニックの出番です。一行目の工夫、数字の使い方、構成のバランス。自己分析ができているうえでの仕上げだから、テクニックが本来の効果を発揮します。
多くの学生は、自己分析が先だという発想がないまま、いきなり書き始めます。でも、自己分析を飛ばして書いた文章は、面接で掘り下げられたときに答えられません。遠回りに見えても、自己分析から始めたほうが、トータルでは早いのです。

ESは、面接の土台
ESの見栄えが良いことと、面接で答えられることは、別の話です。見栄えは文章力で整えられます。でも、面接で掘り下げられたときに答えられるかどうかは、自分のことをどれだけ理解しているかで決まる。
自己分析をして、自分の軸を見つけて、その軸から書く。手間はかかります。でも、そうして書いたESは、自分の言葉で書かれています。面接官が何を聞いても、あなたの言葉で答えられる。
ESの書き方を工夫する前に、自分と向き合う時間をつくってください。それが、ESの質を根本から変える、いちばん確実な方法です。



