同じ大学、同じ学部、同じゼミ。条件はほとんど変わらないのに、次々と内定を取る人もいれば、苦戦する人もいます。
学歴も、経験も、コミュニケーション力も、そこまで大きな差があるようには見えない。それなのに、結果が分かれる。
この差は、どこから来るのでしょうか。
面接官は、未来を見ている
面接官は、目の前にいる学生の「いまの実力」だけを見ているわけではありません。未来の成長と活躍を予感して、合否を決めています。
なぜ、いまの実力ではなく未来を見るのか。仕事というものが、根本的に不確実だからです。
振り返ってみてください。オイルショック、バブル崩壊、リーマンショック、そしてAIの急激な台頭。どれも、起きる前には誰も正確に予見できなかった。会社は、そのすべてを言い訳なしで引き受けてきました。
明日、何が起きるか分からない世界で働く以上、いまできることよりも、これからどうなりそうかのほうが重要になります。変化に対応し、成長し続けられるかどうか。面接官が見ているのは、そこです。
いくら現在の実力が高くても、成長が止まっている人からは、その予感が出てきません。
一方で、現在の実力がずば抜けていなくても、いま現在進行形で成長している人からは、可能性を感じます。面接官は、その可能性に内定を出すのです。
「存在感のある学生」の正体
では、成長の予感とは、どこに現れるのでしょうか。
面接で内定する学生には、二つの特徴があります。「存在感のある学生」と「社会人慣れした学生」です。
まず、存在感について。
面接官は、日々仕事をしてお金を稼いできた人です。学生が上っ面で対策してきたところで、そんなものは見透かされます。
そもそも、学生は社会人より能力が劣っています。それは当然のことです。あなたが中学生より多くのことを知っているのと同じで、社会人はあなたより多くの経験を積んでいる。能力で勝とうとしても意味がありません。
面接官が見ているのは、能力ではなく、向き合い方です。
深いレベルで自己分析ができている学生は、自信に満ちています。やりたいことが明確になっている学生には存在感がある。覚悟を決めた人が持つ独特の落ち着きがある。
そして、就職活動を通して自分の至らない点と向き合っている人、自分がいま成長しているという実感を持っている人にも、自然と存在感が出てきます。
自分と真剣に向き合っている人からは、光るものが見える。面接官が見つけようとしているのは、その光です。
逆に、弱さから逃げている人は、それが目つきや顔つきに出てしまう。面接官は、そこも見ています。
次に、社会人慣れについて。
これは、話がうまいとか、敬語が正しいとか、そういうことではありません。自分がどういう立ち位置で話せばいいかが分かっている、ということです。
面接で何を求められているかを知るには、まず自分の立ち位置を把握する必要があります。ここが最初の一歩です。
経験がないと、ここで滑ります。無駄にかっこつけたり、賢い風を装ったり、逆に卑屈になりすぎたり。どれも、自分の立ち位置が分かっていないから起きることです。
この温度感は、経験からしか身につきません。社会人訪問を重ね、大人と真剣に話す場を積んできた学生は、面接の場でも自然体でいられます。何を求められているかに対する感度が高いのです。

「自信がない」のは、悪いことではない
自信がある学生が内定する、と聞くと、「自分には自信がないから無理だ」と思うかもしれません。
でも、我究館では昔からこう言い続けています。「今の自分に自信がない」という人ほど、実は難関企業の内定に近いかもしれない、と。
自信がないのには、理由があります。自分の理想と現実のギャップを知っているからです。自分の弱みに向き合ってきたからです。
どうすればいいかがはっきり分かっていなくても、そこに何らかの手を打たなければならないことは分かっている。でも、うまくいくかどうかは分からない。だからこその弱点であって、だからこそ自信が持てない。
それは、当たり前のことです。
弱点を開き直って無視したり、見なかったことにしたりするよりも、よほどいい。自信がないということは、自分に問題意識を持てているということです。成長の入り口に立っているということです。
怖いのは、根拠のない自信を持っている状態のほうです。自分と向き合うことができていないのに、なんとなく大丈夫だと思っている。そういう人は、少なくありません。
就活中は、自分の弱さや至らなさと何度も向き合うことになります。面接で落ちて、自信を失って、それでもまた立ち上がって次に向かう。そのサイクルを繰り返すうちに、最初にあった不安とは質の違う、静かな自信が育っていきます。
その自信は、「自分はすごい」という思い込みとは違います。自分の弱さを知ったうえで、それでもやるべきことをやっている、という実感から来るものです。
自信の源は、いつの時代も同じです。見たくないものから目をそらさず自分と向き合うこと。勇気を出して全力で何かに取り組むこと。そして、支え合える仲間や家族の存在。
外から与えられる自信ではなく、内側から湧き上がる確信。面接官が感じ取る「予感」は、この確信から出てくるものです。

差をつけるのは、準備と振り返り
もう少し具体的な話をします。
落ちる人と受かる人の差は、能力ではありません。準備と振り返りをどれだけ徹底できたか。その差です。
準備とは何か。自己分析を繰り返すこと。社会人訪問に行くこと。模擬面接を重ねること。エントリーシートを何度も書き直すこと。
そして、それぞれの経験を振り返り、自分の甘さに気づき、次に活かすこと。
地味な作業です。華やかさはありません。でも、この積み重ねが面接の場に出ます。
自己分析を三回繰り返した人は、一回で終えた人よりも、自分の言葉に確信を持っています。社会人訪問を二十人重ねた人は、三人で止めた人よりも、大人との会話に慣れている。模擬面接で何度もつまずいた人は、本番で同じ質問をされたときに、落ち着いて答えられます。
行動量と自信は比例します。準備した人だけが、落ち着いて語れます。
これは、前回の記事でお話しした「見せ方モード」とは逆の話です。見せ方を磨いて面接を乗り切ろうとする人と、準備と振り返りを通じて自分自身が変わっていく人とでは、面接の場に立ったときに、言葉の厚みがまるで違います。
面接官は一日に何十人もの学生と話します。そのなかで、準備してきた人の言葉と、していない人の言葉の違いは、はっきりと分かるものです。
同じ質問に、同じような内容を答えていても、伝わるものが違う。面接官が感じる「予感」の差は、ここから生まれます。

内定の先を見ている人が、内定する
最後に、もうひとつ。
内定が出る人は、内定をゴールにしていません。
自分は何をしたいのか。どこで、誰に、どんな価値を届けたいのか。その先が見えている人の言葉には、迫力があります。面接官は、その視線の先を見ています。
あなたが目指すのは、数カ月後の内定ではありません。もっと先の、自分の夢の実現と、今日から納得のいく生き方の実現です。
内定がゴールになっている人は、入社後の姿が想像しにくい。内定の先を見ている人は、入社後に何をしたいかが見えている。面接官が「予感」するのは、後者です。
能力が揃った面接で、最後に差をつけるもの。それは、自分とどれだけ向き合ってきたか。準備と振り返りをどれだけ積み重ねてきたか。そして、内定の先に何を見ているか。
特別な才能の話ではありません。やるかやらないかの話です。そして、それは今日からでも始められます。



