年末、久しぶりに実家に帰る。夕飯の席で、父親がビールを注ぎながら「で、就職はどうなってるんだ」と聞いてくる。志望している会社の名前を答えると、母親が「聞いたことないけど、大丈夫なの?」と首をかしげ、父親は「もっと安定したところにしておけ」と言う。言い返そうとして、うまく言葉が出てこない。結局「ちゃんと考えてるから」とだけ答えて、テレビのほうに目をそらす。
「親世代の就活の話は参考にならない」「その考え方はもう古い」。そんな言葉を、就活のあいだに一度は耳にしたことがあるのではないかと思います。耳にしているからこそ、親に何か言われると、つい反発したくなるものです。「何も分かっていないくせに」と、心の中でつぶやいてしまう人もいるかもしれません。ただ、親の話には、いまの就活の情報からは得られないものもあります。
この記事では、親世代の就活と、いまの就活の違いを確かめたうえで、帰省の食卓で親の話を聞くことの意味を考えてみます。

「親世代の話は古い」には一理ある
マイナビが2026年1月に、就職活動を終えた、または活動中の子どもを持つ保護者1,000名に聞いた調査があります。子どもが入社する企業にどんな特徴があるとよいかを二つまで選んでもらうと、最も多かったのは「経営が安定している」の50.2%でした*1。
同じ調査で、保護者に自分が就職活動をしていた当時の働き方の考え方を聞くと、「転職は今ほどまだ一般的ではなかった」が48.6%、「1つの会社に勤めあげキャリアアップを目指すことが当たり前だった」が37.6%でした*1。回答した保護者の中には、景気のよかったバブル期に就職活動をした人も、採用が大きく絞られた就職氷河期に就職活動をした人も含まれているのです。
親の多くは、携帯電話もインターネットもまだ当たり前ではなかった時代に、会社を選んでいます。一つの会社で長く働くことが前提だった時代と、転職が珍しくなくなったいまとでは、会社の選び方が違って当然です。「親世代の話は古い」という言葉には、確かに一理あります。

それでも親の話を聞く意味はある
とはいえ、古いことがそのまま意味のないことなら、いま「いい会社」とされている会社も、30年後にはいい会社ではなくなっているかもしれません。いまの就活生が集めている情報も、30年後の就活生から見れば、きっと古い話になっています。
親が教えてくれるのは、会社の選び方そのものより、選んだあとに30年近く働いてきた人の実感です。会社の業績がよかった時期も、苦しかった時期もあったはずです。仕事を辞めたいと思った日も、この仕事でよかったと思えた日もあったかもしれません。今の仕事に満足している親もいれば、本当はやりたいことがあったのに諦めた後悔を抱えている親もいるでしょう。「安定したところに」という一言は、そうした時間の中から出てきた言葉です。
同じ調査で、子どもが内定を得た保護者に、その企業への入社に反対したことがあるかを聞くと、「ある」は2.7%でした*1。「安定したところに」と口にする親も、最後はあなたが選んだ道を受け入れています。親の言葉は、そのまま受け取らなくて構いません。それでも、親がどんなことを経験して、どう思ってきたのかには、いまの就活の情報からは得られないものがあります。

実家に帰りたいと思うのは役に立つからではない
そもそも、目の前の役に立つことだけが大事なら、年末にわざわざ実家へ帰る理由はあまりありません。帰省して就活が有利になるわけでも、内定が近づくわけでもない。それでも帰りたいと思うのは、そこに損得では測れない何かがあるからでしょう。
就活のあいだは、選考の日程、企業の評判、内定率といった、目の前の実用的な情報ばかりを追いかけがちです。そこから少し離れて、親がどう働いてきたのかを聞いてみる。話しているうちに、親のほうから、あなたの小さいころの話が出てくることもあります。何に夢中になっていたのか、どんなことで泣いていたのか。そうした話の中で、自分がなぜいまの道を選んだのかに、ふと気づくこともあるはずです。
あえて就活の生々しい情報から離れて、親がどんなことを経験し、どう思ってきたのかに想いをはせる。その時間が、まわりまわって、あなたの就活をよいものにしてくれるかもしれません。

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「親世代の話は古い」という言葉には一理あります。親が会社を選んだ時代と、いまとでは、前提そのものが違っています。それでも、古いことを理由に聞かずにおけば、30年近く働いてきた人の実感にふれる機会も一緒に手放すことになります。
年末の食卓で就活の話になったら、言い返す前に、親が働いてきた話を聞いてみてください。満足の話でも、後悔の話でも、就活から一歩離れたその時間は、あなたがこれから働いていくうえで、きっとどこかで生きてきます。
(参考)
*1: マイナビキャリアリサーチLab|2025年度 就職活動に対する保護者の意識調査



