「最後に、何か質問はありますか?」
面接が終盤に差しかかると、面接官が手元の書類を閉じて、こう聞いてきます。
この時間のために、前の晩に「逆質問 例」と検索した経験のある人は多いはずです。並んだ例文から三つほど選んでメモし、当日はその中から順番に聞いていく、という準備をしてきた人もいるのではないでしょうか。
実際、マイナビが2023年に行った調査では、面接で面接官に逆質問をしたことがある学生は86.5%にのぼりました*1。
同じ調査では、逆質問を「企業に対する志望度の高さをアピールする機会」と考える学生が55.7%で最も多くなっています。
つまり逆質問は、「志望動機の続き」だと考える学生が多いということです。そして、その認識は正しいものです。
とはいえ、志望動機を考えきった人にとっては難しいことではないはず。志望動機を考える際に「ここは調べても分からなかった」という疑問をすでにいくつか抱えているはずですから、それをそのまま口にすれば、逆質問になるのです。
リストから借りた質問が続かない仕組み
検索で出てくるリストには、「若手はどんな仕事から任されますか?」「活躍されている方に共通点はありますか?」といった質問が挙がっています。たしかに、どの会社でも失礼なく聞ける質問です。
ただし、こうした質問は、あなたの志望動機がなくても成り立ってしまうものです。誰が聞いても同じ、汎用性のある質問だからこそ、例文のリストに載っているのです。
逆質問の際に、面接官が「なぜ、それが気になるのですか?」と聞いてくることがあります。リストに載っているのはあくまで「質問まで」です。当然そこには、「聞きたい理由は」書いていません。その場で「キャリアを考えるうえで、その、大事だと思いまして」と取り繕っても、ろくに考えてきた質問ではないことは面接官に伝わってしまいます。
質問そのものには、面接官も丁寧に答えてくれるはず。あなたもうなずきながら、メモを取るかもしれません。
ところが、それではただ情報を得ただけ。冒頭にあげた「志望動機の続き」としての逆質問にはなりませんよね。
企業の側にも興味深い調査があります。
『就職ジャーナル』(リクナビ)が2024年に、最終面接の担当者300人にアンケートを行っています*2。
学生の逆質問で「面接の評価を大きく下げることにつながったものがある」と答えた人は3割でした。挙がった例は「事前に調べれば分かることを聞かれた」「説明会やそれまでの選考で説明した内容を聞かれた」というものです。
質問がその会社への関心と地続きになっているかどうかが、評価の分かれ目になっていることが、この調査から見て取れます。端的に言うと、薄い質問は却って評価を下げかねないということです。

志望動機が育つと、確かめたいことが残る
採用サイトを何周も読み、説明会にも出て、ニュース記事まで当たったのに、いちばん知りたいところで情報が尽きてしまう。本気で企業リサーチをしたことのある人なら、こんな感覚に覚えがあるのではないでしょうか。
「この会社でなら、自分のやりたいことができるはずだ」。志望動機の芯には、こうした一文が入っているはず。でも、事業の力点が本当に採用サイトのとおりなのか、やりたい仕事がこれからどうなっていくのかまでは、外からは調べようがありません。真剣に考えてきた人の手元には、答え合わせのできていないことがいくつも残っています。
逆質問とは、その答え合わせを、中の人と直接できる時間です。そう捉えると、質問を無理にひねり出す必要はなくなります。
先ほどの企業側アンケートには、逆向きの結果もあります。「評価を大きく上げることにつながった逆質問がある」と答えた担当者は3割強にのぼりました*2。
例として挙がったのは、企業理念から自分の働き方の計画を導いて聞いた質問や、学生なりの業界分析に基づいて業界の将来を聞いた質問です。共通しているのは、質問の手前に、その学生自身の考えがあることです。
こうした、自分の分析を先に差し出して確かめる聞き方を、『絶対内定』は「仮説」という言葉で呼んでいます。もらった答えを企業分析や志望動機に取り入れれば、次の面接では、本人に聞いて確かめた事実を土台に、一段深い質問ができます。
つまり、逆質問は面接をまたいで続いていきます。もらった答えを志望動機に取り入れ、次の面接でまた確かめるという往復が、志望動機を育てていきます。

面接前にやっておく逆質問の準備
1. 志望動機を書き出し、確かめられていないことに印をつける
面接の前に、その会社への志望動機を紙に書き出します。一文ずつ「これは自分で確かめたことか」と問いながら見ていくと、採用サイトの言葉を写しただけの箇所や、説明会で聞いた話をそのまま信じている箇所が出てくるはずです。そこに、印をつけていきます。
三つの準備の中で、この印つけがいちばん大事です。
印がついた場所が、そのまま質問の種になります。たとえば「御社の〇〇という方針に惹かれているのですが、現場ではどのような形になっていますか?」のように、自分の志望動機に根を持つ質問がつくれます。この形なら「なぜ、それが気になるのですか?」と聞き返されても困りませんし、むしろ志望動機を話すきっかけが増えます。
印だらけになったなら、その志望動機は外の情報を並べただけかもしれない、と面接の前に気づけます。逆質問の準備が、そのまま志望動機の点検になります。
2. 面接官自身に、その会社を選んだ理由を聞く
確かめたいことをうまく質問の形にできないときは、目の前の面接官に「なぜこの会社に入り、今のキャリアを歩まれたのですか?」と聞いてみてください。『絶対内定』ですすめている聞き方です。
新卒で入った人でも、転職してきた人でも、その人にしか話せないことを話してくれます。聞かれた側も、自分自身のことなら話しやすいものです。そして返ってくる答えは、あなたの志望動機を磨く材料になります。
働いている本人が語る「この会社を選んだ理由」は、採用サイトのどこにも載っていません。それを聞ける相手が目の前に座っているのが、面接という場です。
3. もらった答えを、志望動機に書き足す
面接を終えたあとは、逆質問への答えを思い出して、志望動機のどこに置けるかを考えます。思っていたとおりの答えだったら、その部分はもう、中の人に聞いて確かめた言葉です。次の面接では、同じ一文を前より強く語れます。予想が外れていた場合、それは志望動機を書き直すための材料です。
どこにも書き足せない答えだったときは、質問の側が志望動機とつながっていなかった合図です。1の「確かめられていないことへの印つけ」からやり直します。
面接のたびにこの書き足しを繰り返すと、質問は少しずつ具体的になっていきます。一次面接で確かめられなかったことは二次面接で聞けますし、その答えを携えて最終面接に向かうこともできます。志望動機は、選考が進むほど自分の言葉に近づいていきます。

質問が浮かばないときに見直す場所
逆質問が浮かばないとき、焦って例文のリストに戻りたくなるかもしれません。ただ、ここまで見てきたとおり、聞きたいことは、志望動機の側から生まれます。浮かばないのは、志望動機のどこかに、まだ自分の言葉になりきっていない場所があるからです。
だとすれば、開くのは、自分の志望動機のほうです。自分は何をやりたいのか。なぜ、この会社なのか。そこに向き合った分だけ、確かめたいことが手元に残り、面接の最後の時間を支えてくれます。
「最後に、何か質問はありますか?」と聞かれて、自分の中から出た問いを口にできるとき、あなたはその会社とも、自分自身とも、すでに深く向き合ってきています。逆質問の強さは、その日までに自分と向き合ってきた時間から生まれます。面接のテクニックの話に見えて、根っこにあるのは自己理解です。
(参考)
*1: マイナビ HUMAN CAPITAL サポネット|24年卒 就活生の8月の活動状況 / 面接官に逆質問をしたことがある学生は86.5%。逆質問を「企業に対する志望度の高さをアピールする機会」と考える学生は55.7%(2023年8月実施、2024年卒対象、有効回答1,629名)
*2: 就職ジャーナル(リクナビ)|【2024年版】最終面接(役員面接)の逆質問で「評価が上がる・下がる」の違いとは?最終面接担当者300人アンケート(2024年2月実施、過去5年以内に新卒採用の最終面接に携わった担当者300人対象)



