グループディスカッション(GD)の最中、頭の中で発言のリハーサルをしていたという経験がある方は多いのではないでしょうか。
「次はこれを言おう。いや、こう言えばいいかな」と組み立てながら、口に出すタイミングを計り、うまく言えたら少しほっとして、言いそびれたら焦る。終わったあとに振り返るのは、「今日は2回しか発言できなかった」という後悔ばかり。
サマーインターンの選考やグループワークで、こんなふうにGDの時間を過ごす人も少なくないはずです。
ですが実は、GDはチームで「いい議論」をつくる場なのです。「いい発言」は、その材料のひとつでしかありません。
だから、議論をつくる場で意識が自分の発言の出来にばかり向いているとしたら、その向き合い方そのものが、落ちる原因なのかもしれません。
多くの人が、GDを「発言を審査される場」だと思っている
就活を経験した学生300人に尋ねた調査(2022年)では、66.7%が、グループワークによる選考に苦手意識があると答えています*1。
理由として挙がっているのは、自分の意見を話すのが得意ではないことや、「企業の評価基準がわからないから」という声です。
二つは別々の悩みに見えて、実は同じ根を持っていると思います。どちらも、GDを「一人ひとりの発言の質を審査される場」、いわば面接の集団版だと捉えるところから来ている悩みです。
GDを「話す力が試される場だ」と思っていれば、得意ではない人が怖くなるのは当然でしょう。そして評価基準が見えないとき、とりあえず目立つ発言や鋭い発言で備えようとする人がいても不思議なことではありません。
「いい発言」を狙う姿勢は、この「GDの捉え方の誤解」から生まれています。
GDでは「素の状態」があらわになる
GDで出されるのは、「優秀な社員とは何か」「歩きスマホをなくす方法を考えよ」のような、正解のないテーマです。4〜6人で30分ほど議論して結論を出し、最後に発表するのが一般的な流れになっています。
正解がないので、議論が進むにつれて、考えなければいけないポイントが次々に見つかることでしょう。そこに制限時間の焦りが重なって、議論はだんだん混沌としていきます。
用意してきた答えが通用しない場では、取り繕った振る舞いは長く持ちません。『絶対内定』は、これを「GDでは素の状態があらわになる」と表現しています。だからこそ企業は、GDで学生の人間性や素の能力を見ることができるのです。
企業がGDで見ていることは、大きく2つに分かれます。
「論理性や思考力、議論を展開する力といった個人の能力」と、「傾聴力や他者を活かす力といったチームプレーの能力」です。
そして「いい発言」を狙う人は、後者の「チームプレーの能力」が測られるということを見落としています。GDでは、チームで仕事をする社会人としての基本が見られているのです。

「いい発言」を狙うと、聞けなくなる
では、「自分の発言の準備だけ」に意識が向いているとき、何が起きているのでしょうか。
人の話は耳に入っていても、頭の中では次に言うことを組み立てているのだから、他のメンバーが話している時間は、「自分の出番待ち」の時間になっているのです。
この状態は態度に表れるものです。
相づちが消え、表情が硬くなり、人の意見への反応がなくなります。まわりからは、議論に関心のない人、自分のことしか考えていない人に見えることでしょう。
面接なら、この印象の悪さは本人の評価が下がるだけですが、GDでは、評価がチーム単位で連動しやすいぶん、影響は本人にとどまりません。
全員が「いい発言」を競うチームを想像してみてください。そんなチームでは、発言がかみ合わないのではないでしょうか。
人の意見を受けて発展させる人がいないので、議論は深まらず、結論は誰かが強引にまとめたものになりがち。結果として、メンバー全員が自己中心的に見えてしまい、全員が落ちる可能性が高まります。
逆に、協力し合っているチームは、議論の中身も、雰囲気も、発表も質が上がります。参加している全員が、優秀に見えるのです。
『絶対内定』では、GDの結果は「全員受かるか」「全員落ちるか」のどちらかに傾きやすい、と指摘されています。あなたの評価は、あなたの発言の質だけでなく、チームの議論の質と一緒に決まります。
「いい役割」や「いい発表」を狙うのも、同じ構図です。進行役をやれば有利、発表者は目立てる、という噂は毎年流れますが、それも結局「自分が優秀に見える」「有利になる」ということを中心に考えているということですよね。
『絶対内定』は、役割と選考通過に直接の関係はない、と断言しています。企業が見ているのは、結論に至るまでの議論への貢献であって、発表の上手さだけではありません。それだけで通過が決まることはないのです。
だとすれば、いちばん合理的なのは、「このチームを全員で通過させる」つもりで動くことだといえます。自分の見え方を気にするより、チームの議論の質を上げるほうが、結果として自分の評価につながる、ということです。

議論に貢献するために、当日できること
1. 話すこと以上に、聞くことに意識を向ける
三つの中で最も結果を左右するのは、聞くことへの意識。傾聴力や他者を活かす力といったチームプレーの能力は、どれも人の話を聞くことの上に成り立っています。
たとえば、相手のほうに体を向け、適度に相づちを打ち、意見に肯定的な反応を返すこと。相手が伝えたいことを理解しようとして聞く姿勢は、それだけでチームの空気を変えます。
また、いいアイデアは、いい空気から生まれます。発言しやすい雰囲気をつくることは、それ自体が議論の質への貢献であり、チーム全体を通過に近づけます。
この因果には、チーム研究の裏づけがあります。気兼ねなく発言できる雰囲気は「心理的安全性」と呼ばれ、チームの学習を促して成果につながることが、実証研究で確かめられています2。約5,000のチームを含む136の研究を統合したメタ分析でも、心理的安全性は個人とチームの成果と結びついていることが確認されています3。
そして、聞くことは、あなた自身の発言の質を上げてくれることでしょう。議論の流れが見えるので、いま何が論点で、何が足りないのかがわかり、議論を前に進める発言ができるのです。
つまり「いい発言」は、人の話を聞いた結果として、文脈の上に出てくるということ。一人、頭の中で考えたことを発言しても、文脈から切り離された発言になってしまいます。
2. 人の意見を、まず受け止める
誰かの発言を、安易に否定しないこと。まず一度肯定して、議論に活かせる部分がないかを考えます。
そもそも、発言には勇気がいるものです。せっかくの誰かの発言が、あなたの「それは違うと思う」のひと言でその勇気ごとかき消されかねないのです。その人は残りの時間、口を閉ざしてしまうかもしれません。それはチームの損失であり、議論の質を通じて、あなたの評価にも返ってきてしまいます。
また、意見が対立しても、勝ち負けの形には持ち込まないこと。それぞれの意見にどんな見落としがあるかを、全員で検討する方向に運ぶと議論は円滑になります。
3. 場を乱す人がいたら、敵対せずにルールで抑える
就活をしていると、自分の意見を押し通し、人の意見を否定し続ける人に出会うこともあるでしょう。どんなにこちらが協力プレーを目指しても、その人が話し続ければ、まわりは口を閉ざしていくものです。こうなると、話し合いの形はもう保てません。
このとき、やってはいけないのは、正面からぶつかること。「他の人の意見も聞きましょうよ」と向き合ってしまうと、議論はあなたとその人の言い合いになるかもしれません。空気は悪くなり、議論は止まり、結果損をするのはチーム全員です。
代わりに、特定の誰かではなく、全員に関わるルールを提案するのが得策です。
たとえば「全員が意見を言ってから決めませんか」「多数決ではなく、全員の意見を聞いてから絞りませんか」と持ちかけるのです。ルールは人を責めないので角が立たず、全員を相手にしてまで押し通す人はまれです。
また、こうした場面は、評価の機会にもなります。対立する意見を調整できるか。否定されても感情的にならずに議論を進められるか。この2つは、GDの評価項目に入っています。場を立て直す動きは、それ自体が議論への貢献です。

GDの選考に通る人が、いつも通る理由
『絶対内定』には、GDの選考は、通る人はいつも通り、落ちる人はいつも落ちる、と書かれています。選考に通るかどうかが、その日までに積み重ねてきた会議の場数と結びついているからです。
サークル、ゼミ、アルバイト。日頃の会議で議論に貢献している人は、GDでも同じように振る舞えます。GDも会議も、正解のないことをチームで議論する場だからです。次のGDまでに時間があるなら、身近な会議の場で、聞く姿勢と受け止める姿勢を試しておくことをおすすめします。
会議の場数と並んで、「自己理解」がもうひとつの土台になります。素の状態があらわになる場で強いのは、素の自分がチームにどう貢献できるかを知っている人です。
場を明るくするのが得意なのか。論点を整理するのが得意なのか。人の意見を引き出すのが得意なのか。これまでチームの中で自分がどんな貢献をしてきたかを振り返り、言葉にしておくことは、「いい発言」のネタを用意していくよりも、ずっと確かな準備になります。
結局のところ、GDが見ているのは、あなたがチームの中でどう振る舞う人間か、ということです。その答えを用意する作業は、今日から始められます。
(参考)
*1: 就職ジャーナル(リクルート)|【グループワークが苦手な人へ】人事が見ているポイントと乗り切り方を解説(調査期間2022年9月、2023年3月卒業予定の学生300人対象)
*2: Administrative Science Quarterly|Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams(Edmondson, 1999)
*3: Personnel Psychology|Psychological Safety: A Meta-Analytic Review and Extension(Frazier et al., 2017)



