ガクチカ——その奇妙な四文字。学生時代に力を入れたことは何ですか、というおなじみの問いです。
どの企業も、この質問を必ず入れてきます。それはなぜか。当然、その答えに価値があるからです。企業はガクチカで何を聞こうとしているのか。今日はその話をします。
ガクチカと聞いて、あなたはこう考えるかもしれません。代表を務めたわけでもない。受賞も留学も起業もしていない。誇れる実績がない、と。
実は、ガクチカで聞きたいのはそんな話ではありません。そんなことは、履歴書を見ればわかるのですから。
その仕事は、誰が作ったのか
少し、就職したあとの話をします。
会社に入ると、最初は仕事をもらう側です。誰かが用意した仕事が、上から降りてくる。ときには、なんでこんなことを、と文句も言いたくなる。つらいと感じることもある。やらされている、と思う日もあるはずです。
でも、その仕事は、どこから来たのでしょうか。あなたの手元に届いたその仕事は、誰かが作ったから、そこにあります。新しい事業を立ち上げた人がいる。やるべきだと声を上げた人がいる。その仕事を生み出した、誰かがいる。
もし、誰も仕事を作らなかったら、どうなるか。降ってくる仕事は、なくなります。会社は回らなくなる。もらう側しかいない会社は、いずれ立ちゆかなくなります。仕事を作る側がいて、はじめて会社は動いている。

仕事とは、価値を作ることだ
ここで、仕事とは何かを、考えてみます。
仕事とは、つきつめれば、価値を作ることです。そしてその価値は、自分のためのものではありません。仕事である以上、はじめから、誰かのために作るものです。誰かの役に立つ、誰かの困りごとを解く、誰かの一日を少し良くする。仕事とは、誰かにとって意味のある何かを作って、渡すこと。それを、貢献と呼びます。もらってこなすだけに見える作業も、もとをたどれば、誰かへの貢献の一部です。
そして、その価値は、最初の一滴をたどると、必ず誰かの主体性から始まっています。言われてもいないのに、これをやろう、これを変えようと思って動いた人がいる。そこから価値が生まれ、仕事になり、めぐりめぐって、新人のあなたの手元に降りてくる。主体性が価値を生み、価値が仕事になり、仕事が会社を回している。一本の流れです。
だから、会社が本当に欲しいのは、この流れの源流に立てる人です。価値を作れる人。その源流にあるのが、主体性です。

ガクチカが、本当に聞いていること
ここまで来ると、なぜ会社がわざわざ学生時代の話を聞くのかが、見えてきます。
会社が知りたいのは、あなたが自分から価値を生んだ経験です。誰かに言われたからではなく、自分でこれをやりたい、これを変えたいと思って動いた。自分で課題を見つけて、自分の手で、誰かのために何かを生んだ。そういう経験が、あなたにあるか。それを、過去の経験から読もうとしています。
これが、主体性です。むずかしい言葉に聞こえますが、中身は単純です。自分で考えて、価値を生もうとしたことがあるか。ガクチカは、本当はそれだけを聞いています。
実績がない、と思う前に
自分には主体性なんてない、と感じるかもしれません。けれどそれは多くの場合、すごい実績がない、と言っているだけです。実績と主体性は、別のものです。
たしかに、大きな実績があればわかりやすい。とんでもない結果を出した人は、それだけですごい。それは事実で、その人に実績では勝てないでしょう。でも、ここで問われているのはそこではありません。実績の大小ではなく、自分で考えて価値を生もうとした経験です。
だから、立派な実績でなくてもいいのです。たとえば——
バイト先で新人がすぐ辞めてしまうのが気になって、自分なりに簡単な手引きを作ってみた。サークルで誰も手をつけない会計や雑用を引き受けて、回るようにした。ゼミで毎回議論が止まるのが嫌で、前もって論点をまとめて配るようにした。店の品出しで売れ残りが気になって、置き方を変えてみた。塾のバイトで伸び悩む生徒が気になって、教え方を一から見直した。
どれも実績としては取るに足らないものに見えるかもしれません。けれど全部に、同じ一点があります。誰かに言われたからではなく、自分が気になって自分で動いた。それが、価値を生もうとした、ということです。

適当にやってきたのなら
逆に言えば、自分から動いたことが一度もない経験は、語っても響きません。
バイトをただ言われた通りにこなしていた。サークルになんとなく在籍していた。それなら、その経験を無理に主体性の話に仕立てる必要はありません。別の経験を探したほうがいい。どこかに、自分がこれはと思って動いた経験があるはずです。
ここで、話を盛ってもしかたありません。会社は実績を見ていないのですから、実績を大きく見せたところで、意味がない。ないものを足すのではなく、自分が動いた経験のほうを探す。向ける労力が、まるで逆です。
もし本当に、どれだけ探しても一つもないのなら。それは書き方の問題ではありません。これから何か一つ、自分で動いてみればいい、というだけのことです。残りの時間で、いくらでも作れます。
四つの問いで、思い出す
自分から動いた経験が見つかったら、それを四つの問いに分けて書き出します。それぞれ百字くらいが目安です。
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何に向かって、何をしたのか。状況と、自分が取った行動を具体的に。
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なぜ、それに取り組んだのか。誰に頼まれたわけでもないのに動いた、その理由。
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特に何を頑張ったのか。どんな壁にぶつかり、どう越えたのか。
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結果、何が変わり、自分は何を得たのか。数字で言えるものは数字で。
この四つでいちばん大事なのは、二つめです。なぜ、それに取り組んだのか。ここが空っぽだと、何をやってもやらされていたように見える。逆にここに自分の理由がはっきり通っていれば、どんなに地味な経験でも、あなたの主体性が立ち上がってきます。
これは、誇れる実績を持っている人にも、そのまま当てはまります。いや、実績がある人ほど、気をつけたほうがいい。全国一位になった、と事実を差し出して、それで終わってしまうからです。
考えてみてください。あなたが全国一位だとして、その一位は、目の前の面接官の人生には、まだ何も手渡していません。相手にとっての価値には、まだなっていない。
でも、あなたの実績と、それを掴むためのあの日々に意味がないはずがない。そこでの成長や込めた想いに値打ちがないなんてことがあるはずがない。だからこそ、あなたはその実績そのものではなく、その過程を語るのです。
そこを語るために、二つめを軸にします。なぜ取り組んだのか。何を乗り越えたのか。事実としての一位ではなく、その奥にある主体性を見せる。
相手が本当に知りたいことを汲んで、その答えを渡す。それ自体が、誰かにとって意味のある何かを渡す、という貢献です。実績を並べて終わるのは、独りよがり。実績が相手にとって持つ意味まで語るのが、貢献。その姿勢こそが、あなたが価値を生む人だ、という何よりの証明になります。

あなたは、何を生もうとしたのか
結局、ガクチカが聞いているのは、たった一つです。あなたは自分で考えて、誰かのために価値を生もうとしたことがあるか。
その価値は、最後には誰かの役に立つもの——つまり貢献です。あなたはどんな人で、世の中に何を渡したいのか。なぜそう思うのか。働きたい、貢献したいと思うなら、その奥に理由があるはずです。何かがあったはずです。
何があったのか。なぜそう思ったのか。本気でそう思ったのなら、その周りには必ず、あなたが自分から動いた経験があります。ガクチカに書くのは、それです。すごいかどうかは、関係ありません。



