一つ目の内定が出ました。画面を何度も見直して家族に伝え、そのあとで少し落ち着かなくなる。「これで終わりにしていいのかな」。本命はまだ選考の途中で、周りは「保険ができたんだから、続ければいい」と言います。
一つ目の内定が本選考より前に出るのは、珍しいことではなくなりました。2026年卒で就職先を決めた学生のうち、最初の内定を2025年3月までに得ていた人は半数を超えています*1。
続けるか、やめるか。その判断を「保険があるかどうか」で決めている人が多いはずです。
一つ目の内定を「保険」と呼んだ瞬間に、その会社を選ぶ理由を考える作業が止まります。続けるかやめるかは、保険の有無では決まりません。決めるのは、その内定先が自分にとって志望度の高い会社かどうかを、自分の言葉で言えるかどうかです。
内定を持ったまま続ける人が多数派
2026年卒で就職先を決めた学生1,165人のうち、最初の内定を取ったあとも就職活動を続けた人は67.8%でした*1。
続けること自体は、多数派の動きです。一つ目の内定で止まる人は少数派で、続けるかどうかを悩んでいる段階で、すでに標準の手順の中にいます。
やめた人は何を理由にやめたか
同じ調査で、就職活動を終えた学生1,082人に理由を聞いています。いちばん多かったのは「志望度の高い就職先から内定を取得し、進路が決まったから」で、75.8%でした*1。
やめる理由の中心にあるのは、内定の有無ではなく、内定先の志望度です。
「志望度は高くないが、内定を取得し、進路が決まったから」は19.8%。「就職活動を続けることに疲れたから」が8.7%、「面倒で早く終わりたかったから」が8.8%と続きます*1。
志望度が高い会社に決まって終える人が大半で、志望度が高くない会社で終える人と、疲れて終える人が一定数いる。終え方は、この三つに分かれています。

「保険」と呼ぶと判断が止まる
保険は、使わないで済むことを前提にした言葉です。内定を保険と呼んだ時点で、その会社は「本命に落ちたときに行く場所」になり、行く理由を考える作業から外れます。
止まるのは、内定先の評価だけではありません。続ける先の評価も止まります。保険があるから安心して受けられる、という理由で受ける面接には、その会社を確かめる目的が入っていません。受けている本人の手元にも、志望動機の材料が残りません。受ける会社が増えても、確かめる中身が空のままなら、増えるのは面接の回数だけです。
続けるかやめるかを決める前に、一つ目の内定先の志望度を、自分の言葉で言えるかを確かめます。順番は、それが先です。
志望度が高いと言えた人は、そこでやめてかまいません。言えなかった人は、何が足りなくて言えないのかが、そのまま続ける理由になります。
我究館の面談で確かめること
内定を取ったあとに面談へ来る学生は、多くありません。来る学生の多くは、複数の内定を前に決めかねています。
我究館の面談では、内定を持って迷っている学生と、内定先を横に並べて整理します。「これを取ればこれは取れない。ただし、それは勘違いかもしれない。調べたか」と、一つずつ確かめる作業です。
内定が一つのときも同じで、並べる相手は「まだ受けている会社」です。内定先と本命の間で、何が取れて何が取れないのか。その差は調べた結果なのか、想像なのか。
面談で見ているのは、学生がその差を自分の基準で言えるかどうかで、会社の優劣は見ていません。差を自分の基準で言えた学生は、続けるにしてもやめるにしても、何を根拠に決めたかを言えます。

続けるかやめるかを決める前にやること
1. 内定先の志望度を一行で書く
「行きたい」「行ってもいい」「行きたくない」のどれかを選び、理由を一行だけ添えます。この一行が、三つの中でいちばん重要です。
理由の欄に給与や勤務地や知名度しか出てこないなら、基準がまだ言葉になっていません。自分の過去のどこから「行きたい」が来ているのかを、一行に含めます。この一行があると、やめる判断にもやめない判断にも、自分の根拠が付きます。
2. 続ける会社ごとに確かめることを一つ書く
「本命だから」は理由になりません。内定先と比べて、その会社で何を確かめたいのかを一つ書きます。取れるもの、取れないもの、まだ調べていないもの。確かめることが具体なら、面接で聞くことも決まります。
確かめることが書けない会社は、受ける理由がない会社です。書けた会社の面接では、志望動機が内定先との差の言葉で書けます。
3. 続ける期限を自分で決める
承諾の期限は会社が決めます。続ける期限は、自分で決めるものです。
期限を先に置いておくと、終える理由が「疲れた」になる前に、確かめた結果で終えられます。期限のない継続は、確かめる作業のつもりが、決断の先送りになります。
内定の数では決まらない
一つ目の内定は、自分の基準が初めて試される場面です。続けるにしても、やめるにしても、その内定先を自分の言葉で位置づけてからでないと、どちらの判断も根拠を持ちません。
「行きたい」の理由が会社の条件だけで埋まるなら、続けるかどうかを決める前に、その理由がどこから来たかを書き出してください。自分が何を得たくて、誰に何を届けたくて働くのか。それを先に言葉にした人だけが、一つ目の内定を、保険ではない名前で呼べます。

(参考)
*1: リクルート リサーチセンター(旧・就職みらい研究所)|『就職白書2026』データ集(学生調査: 2025年11月20日〜12月8日、民間企業等を対象に就職活動を行った2026年卒予定の大学4年生・大学院2年生1,326人。最初の内定取得時期と内定後の活動継続は就職先確定者1,165人、終了理由は就職活動終了者1,082人の回答。3月までの累計は同一設問の各月の合計)



